特定受遺者とは、特定遺贈を受ける人のことをいいます。
わかりやすくいえば特定受遺者とは、何か特定された相続財産だけを、遺言によって受け取る人のことです。
特定受遺者は相続人に限らず、人間ならだれでもなることができます。
お腹の中にいる胎児、会社組織のような法人でも特定受遺者になることができます。
特定受遺者に相続財産が移転する時期は、昭和15年の大審院で次のように判決されました。
相続財産に属する特定物または特定債権が遺贈の目的とされている場合、遺言の効力が発生するときに、その権利が特定受遺者に移転します。
つまり特定受遺者に指定された者は、遺言の効力が発生したその瞬間に、特定された相続財産を取得するということです。
遺言の効力発生は死亡の瞬間ですから、死亡した瞬間に特定受遺者は特定された相続財産を取得しています。
ただし、特定遺贈の目的物が金銭、不特定物または相続財産でない場合には、遺贈は債権的効力を生ずるにすぎません。
すなわち、受遺者は物の権利移転を遺贈義務者に対して請求する権利を取得するにとどまります。
この場合、遺贈義務者がその履行のために目的物を特定した場合には、特定時に所有権が移転することになります。
特定受遺者は、特定遺贈を受けるか放棄するかを、自分で決めることができます。
そして特定遺贈を受けるか放棄するかを決めるのに、時間制限はありません。
いつでも特定遺贈の承認か放棄かを決めることができます。
ただし相続人から特定遺贈の承認か放棄かの回答を迫られた場合、回答をしないと特定遺贈を承認したとみなされます。